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と日本にも根付いてきて、宮城にも「スペシャルオリンピックス宮城」というのが去年(95年)の11月にできました。実は会長は私の配偶者です。その11月にできたばかりの団体が、今年の2月に蔵王で冬季オリンピック大会を開催いたしました。いわゆるスキー大会ですが、回転もありますし、その人の能力に合わせて、30mや50mをただスーっと滑るだけというのもあります。これでも生まれてはじめてスキーをした、まだ8回しか滑ったことがないというような人たちが出るわけですから、大変なことです。
私も2月に現地に見に行きました。その時に自閉症の選手が、本番になり「滑んない」と言いだし、お父さんやお母さんが滑るよう説得しても駄目でした。その時に練習のときからずっとボランティアで関わって教えていた女性が行くと「滑る」ということになりました。「おばちゃんがゴールで待ってるから滑ってくるんだよ」と話すと納得して、その選手が滑ってきました。ほかの人の言うことは全然聞かなかったけれども、彼女の言うことは聞きました。彼女は腕を広げてゴールのところで待っていて、そこにポーンと彼が滑って来るわけです。彼の方はあっけらかんとしているのですが、彼女の方はもう涙、涙です。周りの人も同じように涙、涙です。どうしても棄権するといっていた人が、その人の関わりで心を開き出場する。その人の関わりがもしその時だけでしたら説得はできていないと思います。これはスペシャルオリンピックスの決まりで、8週間そのようなトレーニングをした人たちだけが出られ、その8週間の関わりのなかで彼と彼女の信頼関係がしっかりと出来るのです。これもまさに接触・継続であるということです。これは1つの例ですが、そういうことがあります。
2番目はきっかけをつくってあげることです。先程のコーディネーターは実にうまいです「気がついたら車に乗せられてました」と。甘い言葉でなんとなくその気にさせてしまう。ボランティア活動も、例えば「可愛い女の子がいるよ」とか、逆に「かっこいい男の子がいるんだぜ」とかなんとか言いながら、そういうことをきっかけにして誘ってみるとよいと思います。ただし、中に入れば絶対に裏切らない、損はしませんからという中味があっての話です。これが「このボランティア活動はすばらしい、君はその意義がわからないのか」などと言うと「なーに、バカ野郎」というようになりますので。うまく誘うというのも1つのコツです。
3番目は、ボランティア=無料というように捉えられています。よく「今日はタダでやってね」という時に「ボランティアでやってね」と言います。これはちょっと違います。ボランティアと言うのは元々の意味がボランタリーですし、ボランティアというのは志願兵という意味です。自分の思いで自分から手を挙げてやることが、ボランティアの趣旨です。これは必ずしもタダということではありません。仕事としてやるのではなく、強制されてやるものでもなく手を挙げて自ら喜んでやるというのが意味で、それとお金をもらうもらわないということは直接的には関係がありません。そういう意味では、ボランティアがとにかくタダということになってしまうのもおかしいし、「ボランティアだからわれわれの団体は力がないんです」というのは、言い訳にはなりません。やはりボランティアをする組織というのは、お金を含めてしっかりしていなければいけません。自前の事務所ぐらい持ち、専任の事務局員を置くというようなしっかりした組織であれば、ボランティアの人も安心して活動できます。
ですから、ボランティア活動の趣旨をきちんと話をして、堂々とお金を集めてください。

 

 

 

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